これまで引っ越しに関する記事をいくつか書いてきて、気になることがありました。
「ひっこし」の漢字表記が3種類ある、ということです。
「引越」、「引越し」、「引っ越し」の3とおりあります。
いったいどれが正しいの?
知らなくても困らないことかもしれませんが、気になったので調べてみました。
まず、スマホで「ひっこし」と入力して変換すると3種類とも表示されました。
次に大手とされる引っ越し業者の社名を見てみると、
・サカイ引越センター
・アート引越センター
・ハトのマークの引越センター
・アリさんマークの引越社
となっています。他にもいくつかの引っ越し業者の社名を見てみましたが、送り仮名無しの「引越」が圧倒的に多いようでした。
次に、引っ越し関連のサービスを提供しているサイト名を見てみます。
・価格.com引越し
・引越し侍
・ズバット引越し比較
・引越しラクっとNAVI
・LIFULL(ライフル)引越し
こちらは送り仮名を付けた「引越し」が多く使われています。
理由は分かりませんが、次のような結果になりました。
業者の社名は「引越」、サイト名などには「引越し」が多く使われている。
どちらも正しいようですが、調べていくと正しい日本語の表記というのは、どうやら文化庁が定めているようです。
下記のサイトに「送り仮名の付け方」というページがありました。
「引っ越し」は「引く」と「越す」が合わさった言葉なので、「複合の語」という項目を見てみます。
「通則6」には、「複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は,その複合の語を書き表す漢字の,それぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。」とあり、例として、「申し込む」、「打ち合わせる」などが挙げられています。このことからすると、「引っ越し」と表記するのが正しいように思えます。
ただし、同じ「通則6」の中には「許容 読み間違えるおそれのない場合は,次の( )の中に示すように,送り仮名を省くことができる。」という記述があり、先述の例では「申し込む(申込む)」、「打ち合わせる(打ち合せる・打合せる)」と記述されています。「引っ越し」の「っ」の送り仮名を省いても読み間違えるおそれがないので、「引越し」でも正しいことになるようです。
さらに「通則7」には、「複合の語のうち,次のような名詞は,慣用に従って,送り仮名を付けない。」と記述されており、「(1) 特定の領域の語で,慣用が固定していると認められるもの。」の「ウ その他」の項目には、「書留」、「切手」、「踏切」、「請負」という例が挙げられています。ですので、「引越」という表記も正しいということになりそうです。
私の想像ですが、引越し業というのは運送業界の1サービスとして成り立ってきた経緯があり、業界では「引越」という表記が慣用として使われてきたのだと思います。それで「ひっこし」という言葉を名詞として使う場合、専門業界では「引越」、一般的には「引越し」という使い分けがされているイメージです。(引越し業者のサイトを見ても、社名は「引越」ですが、本文中には一般消費者向けに「引越し」の表記が使われています。)また、「引っ越す」とか「引っ越したい」という使い方をする場合は、送り仮名をすべて付けるイメージがあります。
長々と書いてしまいましたが、結論としては、
「引っ越し」、「引越し」、「引越」のどれも正しいということのようです。
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